香川正弘先生の後任として、このたび、特定非営利活動法人 全日本大学開放推進機構(UEJ)の理事長に就任をした田端和彦です。香川先生が主に英国の大学の歴史を紐解き、日本で研究を拓いた大学開放の理念は、現在全国各地の大学において実践され花開いています。平成2年の中央教育審議会答申「生涯学習の基盤整備について」により、大学は生涯学習を推進する機関とされ、以後、国立大学にそれらを担う機関が設立されるなど、徐々に大学と市民とを結ぶ機会が増えてきました。
しかしながら大学の中核機能は研究であり、それを活かした教育という二本柱に依拠し、英米などの大学開放の理念には距離があるものでした。これは近代以降の大学の成り立ちの違い、社会教育、職業教育、学校教育と体系の相違の他、放送大学という市民向けの大学教育システムを創り上げた日本の独自性もあってのことでした。
平成16年度の中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」に示された通り、研究と教育に並び、地域貢献が大学における第三の機能とされてきました。以降、多くの大学に地域連携センターなどが設置され、そこで大学教員の研究成果が公開講座として開講されるなど大学の現場での変化の他、科目等履修制度の柔軟な活用や拡充など制度面でもいよいよ大学開放の機会の拡大、気運の高まりがみられます。
そして、今日、人口減少下の我が国において、一億総活躍が叫ばれ久しく、文部科学行政、厚生労働行政の一環としてリカレント教育、リスキリングとの語を用いた施策が広く実施されています。それら施策において、大学開放の位置づけはますます重大視されることと思われます。一方、大学での学士課程教育も教員による講義ではなく、マルコム・ノウルズらが拓いた成人教育の手法であるアンドラゴジー型の学習を取り入れ、地域とともに学生が学ぶPBLを重視するなど、大学開放の必要性が指摘されています。
香川先生が「大学の持つ知的・文化的な資源を社会に活用すること」と提起した大学開放の理念は、さらに充実し、広がる様相を見せいています。そうした中で、全日本大学開放推進機構は、大学開放の研究促進ならびに、啓発活動や政策提言、人材育成、大学開放に関わるプログラム開発等の事業をますます推進していく所存です。 今後ともご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
特定非営利活動法人 全日本大学開放推進機構 理事長 田端 和彦